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31 :240:2006/06/02(金) 10:05:21 ID:XHcBTn9s
(派生編2前スレ>>916の続き)
携帯の液晶画面には神戸のあるバイク屋の名前が映し出されている(バイクハウス中島)
正直1はかけようかどうか迷っていた、もう数年連絡を絶っている
「しかし・・・」ここしかない、そう思い1は通話ボタンを押した
「あい、バイクハウス中島・・・」無愛想な低い声が聞こえた
 1「スイマセン、あの、お、俺の事おぼえてますか?」
中島「・・・名前も名乗らねえ奴の名前なんざおぼえてねぇわ、イタズラ電話やろが」
 1「いえ!その、昔スズキのレーサーレプリカに乗ってた・・・」向こうからくぐもった笑い声が聞こえる
中島「へへっ、わかってんがな、随分と久しぶりやからな、ゴーストインザマシン、そやったな?」
 1「ちょ、ちょっと、いじめないで下さいよ」
中島雄一、俺が走り屋だった頃世話になった人物だ、技術屋上がりの整備士で腕は確かなのだが、
無愛想なその人柄が邪魔をして店の経営はあまり順調とは言いがたい様だ。
中島「で?そのゴーストが一体何の用や、久方ぶりに話をしたいってわけでもないやろ?」
 1「・・・あるマシンを手配して欲しいんです、セッティングその他含めて・・・全て三日以内で」
中島「三日?・・・無理、て言いたい所やけどなぁ、他でもないお前の頼みや、
   やってみよか、その代わり貸し1個やで」
 1「すいません、こんな事頼めるの親父さんしかいないもんですから、ホンマ恩に着ます」
自然とこっちにも多少の関西弁が混じってしまう
中島「まだ入手しにくい奴やが仲間内回れば一台ぐらいなんとかなるわ、んじゃ早速仕事にかかるでぇ」
1は何度も礼を言い電話を切った、あのオヤジの腕は信頼できる、俺の小さな癖まで全て知り尽くした
人だ、問題はこの体が、あの時の感覚を取り戻せるかどうか、それだけだ。

33 :240:2006/06/02(金) 10:10:07 ID:XHcBTn9s
(派生編2>>31の続き)
1は携帯をたたみ病院の玄関口へ戻ろうとした、その瞬間誰かにぶつかった、相手は思いっきりずっこけた
 1「す、すいませ・・・美咲?お前何やってるんだ?」腕を引っ張ってやりながら1は聞く
美咲「い、いやいや!なんでもないよ!なんでも、アハッ、アハハッ!ほ、ほら昼食冷めちゃってんのに
   まだ食べないのかなー、とか思ってサ!」顔を真っ赤にしている
 1「今から食べるって、お前顔赤いぞ、変な奴だな・・・」
美咲「キ、気にしない気にしない、エヘ・・・」
様子のおかしい美咲を不審に思いながらも1は病室へ戻って行った。


34 :240:2006/06/02(金) 10:19:47 ID:XHcBTn9s
(派生編2>>33の続き)
二日後・・・
磯辺が見舞いの干しリンゴを片手に俺の病室を訪ねてきた。
磯辺「よう、調べてきたぜ、愛する友の為に」相変わらず不摂生な生活をしているのだろう
体はガリガリに痩せている、まあ昔からこうなんだが。
 1「愛する友はいいから早く調査結果を聞かせろよ」
磯辺「そいじゃ早速・・・」ガサガサと書類入れから数枚の書類を取り出し話し始める
磯辺「えーー、まあ、相当ヤバい野朗だな、本名は津田弘康、31歳、携帯番号は090-××××-〇〇〇〇、
   表ヅラの仕事は金貸し、裏ではソープ・・・いやコイツは非合法の売春と言った方がいいだろうな
   ・・・を経営している、無論アブない連中との親交も厚い、年収は1億〜1億数千万、
   あとコレは多分になるが2、3、代議士の知り合いもいるらしい、
   住所は自社ビルの○○××・・・っと以上だ、
   叩けばまだまだ埃が出るだろうが、まあ二日じゃこの程度が限界だな」
 1「それだけで十分だよ、しかし思ってた以上に凄まじい奴だな」俺の背中を冷たいモノが伝った
その時急に1の目を見て磯辺が切り出した。
磯辺「1よ、俺はお前の事情も知らねえし聞いてもホントの事は言わないだろうから何も聞かない、
   しかしな・・・コイツとは関わり合いにならない方がいい、やめとけ」
 1「・・・・・・」
普段ヘラヘラしてる磯辺の急に真面目な顔を目の当たりにして、1は事のヤバさを再認識した、だが・・・
 1「すまない、お前の気持ちは嬉しいよ、でもな、もう引き返せないんだ・・・」
磯辺、再び何か言おうとしたが覚悟を決め、蒼穹の如く澄んだ1の目を見て言葉を飲み込む、
「そうか・・・だがもし俺で何かできる事があればなんでも遠慮なく言ってくれ、
必ず力になってみせる」
 1「磯辺、ありがとう」俺は心から目の前の友に礼を言った、危うく涙が出そうになった
この男はそういう人間なのだ、仲間に危機が迫っていると身を挺してでもその仲間を救おうとする

玄関口で磯辺の乗るカフェ仕様のSRを見送った時、時刻は午後7時を過ぎようとしていた、
意を決した1は携帯を開いた、
連中のボス、津山と再び交渉に入る為に・・・。
(駄文失礼しました。) 

47 :240:2006/06/03(土) 04:00:30 ID:3TkQqni4
(派生編2>>34の続き)
しばらくすると受話器から高い声が聞こえてきた「・・・はい津山です」
この声は客商売になれた人間の声だ1は直感でそう感じた
 1「・・・覚えてるか?数日前の夜、首都高でアンタの相手をした男だよ」
津山「ああ・・・あんたか、ウチの幹部の玉を潰してくれたw、
   わざわざ電話させてすまなかったね、実を言うとこちらの方から連絡しようと思ってたんだが」
 1「アンタの方から?・・・」津山の意外な言葉に1は少なからず戸惑う
津山「まさか俺の携帯、それも営業用の奴に直接かけてくるとは思ってなかったよ、
   まあいい、手間が省けて助かったよ」
 1「それはどうも・・・」それ以外言う事が思い浮かばない
津山「アンタの、メットに書いていた文字が少々気になったんでね、そっち方面の仲間に
   調べさせて貰ったんだ・・・ゴーストインザマシン、六甲では右に出る者が
   居なかったそうじゃないか、違うかい?」
 1「・・・ああ」

48 :240:2006/06/03(土) 04:01:49 ID:3TkQqni4
(上の続き)
津山「あの時の走り、少し硬くなってたね、あんた程の走り屋・・・
   いや、裏六甲のコーナーキングの実力はあの程度じゃないだろう」
1にとってはどうでもいい話だ、強引に話を遮って1は津山に聞く
 1「俺はそんな話をする為に電話をしたんじゃない、奈津美をどうした?」
津山「うちの事務所にいるよ、少しうるさいんで今は睡眠薬で眠ってもらってるけどね
   うちの規律を破ったんだそれ相応の制裁を受けて貰う」
 1「制裁、だと?何をする気だ」
津山「しばらくの間、代議士の先生の相手をして貰う、飼って貰うと言った方が分かり易いかな?
   あれ程の玉だ、相手は5000万以上出しても良いと言っている」
 1「貴様・・・」1の携帯を握る手に自然と力が篭る
津山「だが・・・ギリギリで間に合ったようだ、アンタと俺とでもう一度勝負して見ないか?
   もし俺に勝つ事が出来たら、奈津美を解放する、安心しろ、まだ手は付けてない・・・
   部下にも今後あんた等に手出しはさせない様よく言い聞かせよう、約束する。
   ただし、もしアンタが負けたら、奈津美は変態代議士先生の玩具、
   そしてアンタには・・・そうだな、二度とバイクに乗れない体にでもなって貰おうか、
   嫌なら無理にとは言わないが、どうだろう?」
間を置かずに1は即答する
  「こっちもそのつもりで電話をかけたんだ、その勝負受けたぜ」
津山「嬉しいね、それなら明後日の午前1時、今から約30時間後だ、場所は前回と同じ、
   ・・・おっと、アンタのバイクは俺の部下が潰してしまったんだっけな、
   マシンの手配は済んでいるのか?」
 1「ああ、余計な心配は必要ない」
津山「よし、じゃあ以上だ」電話の切れる音がした
しばらくその場に佇んでいた1だが、やがて病院のロビーへ向かってゆっくりと歩き始めた。
(連投失礼しました。)

88 :240:2006/06/06(火) 13:25:48 ID:B+0YGlYb
(派生編2>>48の続き)
その日の夜中、1は事前に用意していた私服へと着替え病院を抜け出した、
中島のオヤジから電話が入ったのだ、「マシンを持ってきた、お前の家の前で待ってる」
1は家路を急いだ、走ると体中が軋んだが構わずに走った、
こんな時に限ってタクシーは一台も走っていない。

自宅アパート前の車道に幌のかかった軽トラックが止まっている、
息を弾ませながら運転席を覗き込むと顔の上に週刊誌をのせてオヤジが寝ていた、
横にある灰皿にはシケモクが山積みになっている、恐らく徹夜で仕上げてここまで届けてくれたんだろう
手の甲で窓をノックするとオヤジは眉間に皺を寄せて起き上がった。
ドアを開け外へ出てくる。「よう」眠たいのかあまり機嫌は良くない様だ。
付いて来いと手で促すと軽トラの後ろへ回り込み幌をめくった、暗くてよく見えない。
こいつをラダーレールに引っ掛けてくれ、そう言われてバイクを軽トラから下ろすための
スロープをトラックの後ろに取り付けた、オヤジがバイクを下ろしにかかる。

オヤジはバイクを下ろし終えると俺に跨ってみる様促してきた、
遠慮がちにマシンを跨ぎ、ハンドルへと手を載せる・・・
'06ZX-10R、カワサキの旗艦モデルだ。年式は異なるが以前、俺はコイツに1度だけ跨った事がある。
2年くらい前の事だ、仕事場の後輩でリッタースポーツに憧れ大型免許を取ったばかりの奴がいて
そいつが買ったバイクがZX-10Rだった。納車に付き合った帰りに少し借りて乗ってみただけなのだが・・・
鳥肌が立った、しばらく四気筒のSSに乗っていなかったという理由もあるのだが
このマシンとなら己の未知の領域まで行けそうな気がした、だがその一方でそう考える自分が恐かった、
またあの頃に戻ってしまいそうな気がしたからだ、
身を焦がす、ある種の快感を伴った緊張感を求め取り付かれたように峠を攻めていたあの頃に・・・
結局その後輩はその後足付きのいいバイクがいいからとZX-10Rを早々に売り払ってしまったため
それ以降俺がこのマシンに跨る事はなかった・・・今日までは
(駄文失礼しました。)

246 :240:2006/06/14(水) 13:55:58 ID:UHdgTjkJ
(派生編2>>88の続き)
その後試走を行いつつサスの調整をしたあと、1が問題のない事を告げると
オヤジは道路脇の縁石に腰を下ろし煙草を吸い始めた、それにつられ1もその隣に座る。
無言で一本の煙草を吸い終わり、薄く開いた眼で前方の何も無い空間を見つめながらオヤジは口を開いた
「またレースでもする気か?」
1は半笑いで返事する「ええ、まぁそんなトコです・・・」
オヤジは小さく頷き「そうか」と言っただけだった。

一服した後、オヤジはゆっくりと立ち上がり大きく背中を反らせ伸びをし
「そろそろ帰るか・・・」と言うと、軽トラの運転席に戻った
軽トラの開いたドアウインドー越しに1は礼を告げた、
しかしオヤジはそれには返事をせず、しばらく眉間に皺を寄せて前方を凝視していたが
やがて顔を向け言った。
「・・・俺の仕上げたバイクで負けんじゃねぇぞ、夢見が悪い」1は返事を返さなかった。

オヤジの運転する軽トラを見送った後、1は腕時計に目を移す(pm11:48)
病院では腐るほど寝ていたため、まだ全然眠たくない、いや、
血が騒いで眠りたくても眠れないだろう、こんなマシンに跨った後では。
「軽く流すか・・・」一人そう呟やくと次の瞬間にはマシンの唸り声と共に
1の姿は闇夜の中へと吸い込まれていった・・・

247 :240:2006/06/14(水) 13:59:05 ID:UHdgTjkJ
(上の続き)
(pm05:12)空が闇からインディブルーへと徐々に景色を変え、小鳥の囀りが聞こえ始めた頃
1は自宅に戻って来た、久しぶりのライディングに体は疲れたが感覚は大方取り戻した
バイクを停め、朝食を買おうと少し歩きコンビニへ入る
さて何を食おうか、と菓子パンなどを手に取ってみるが食欲があまり無い事に気がつく
仕方なくペットボトルのジュースだけを一本買い1は自宅へ戻った。

鍵を開け部屋へ入る、ジュースをラッパ飲みしつつ1は薄暗い六畳一間の部屋を眺めた、
結構散らかっている(・・・片付けといた方がいいか)そう思い1は部屋を片付け始めた
不要な物をゴミ袋に詰め、掃除機をあて、台所周りや棚の上を雑巾で拭いて回る
掃除が済み一息ついた頃、時刻は午前9時を回っていた
「さて・・・」1は再びメットを片手に家を出た
(空気読まずのスレ汚し失礼しました)

254 :774RR:2006/06/14(水) 22:30:49 ID:RjZgExX1
>>247スマン一個突っ込ませてもらうが
pm05:12 は am05:12 の間違いじゃあ無かろうか?

256 :240:2006/06/15(木) 03:55:26 ID:BeyxfxUu
>>254
御指摘の通りです、すみませんorz
amという事で・・・

263 :240:2006/06/15(木) 17:45:41 ID:BeyxfxUu
(派生編2>>247の続き)
通勤やら営業の車で賑わう246号を飛ばし、目的地である磯辺の
興信所前に着く。バイクをビル横に停め、ドアに付いている窓から
事務所の中を覗いて見るが電気は消えている、
試しにドアをノックをしてみるが反応は無い
ドア横の看板に目を移すと(相談、業務受付 10:00〜)と書いている、
自分の腕時計を見ると、まだ9時40分だ、携帯に掛けてもいいが
それほどに急ぐ用事でもない、1は向かいの喫茶店で待つ事にした。

窓際の席へと座りアイスティーを頼む
窓から見える事務所入り口に神経を尖らせつつ新聞に目を通すなどして時間を潰す
が、一向に磯辺の姿は見えない。腕時計を見ると、もう10時を20分以上過ぎている
事務所の窓も暗いままだ。店内で電話をかけるのは少し気が引けるが、仕方なく掛けようと
自分の携帯を手に取った瞬間、後ろから肩を叩かれた、「よう」
磯辺だった。
ニヤニヤしながらコーヒーカップ片手に1のテーブル向かいへ席を移す
「20分以上前からお前の後ろの席でコーヒー啜ってたんだぜ」
「悪趣味だな、居るならいるって言えよ、ストーカー野朗」そう言いつつも1は少し関心していた
「職業柄、常に人の行動の裏を読むようにインプットされてんだわ、すまんなw」
「もう営業時間なってるのに事務所戻らなくていいのか?」
「ヘッ、心配するには及ばんさ、ここ二週間ほどサッパリだからな、お前から依頼された件以外は、
で、こんな朝っぱらから今度は何の用よ?美咲ちゃんのパンツなら今日はレースの黒だ、
しかもガーターストッキング付きだ、勝負下着って奴か?」
「お前それ本気で言ってる?」一瞬頭に血がのぼりかける
「冗談に決まってんだろw」コイツが言うとかなり本気に聞こえて怖い・・・

ちょっとしたやり取りの後、1は本題に入る
「今度は調査じゃないんだ、ちょっと頼み事があってな」
(駄文失礼しました。)

382 :240:2006/06/22(木) 08:24:48 ID:RFFKFO+v
(派生編2>>263の続き)
1は鞄から一枚の書類を取り出した、(保険証券)と大きな文字が印刷されている
磯辺「なんだよ、コレ」契約者、被保険者の欄には1の名前が書かれている、
それだけなら別に問題はない、しかし・・・
「なんなんだよこの(死亡時保険金受取人)てよ、おいッ、お、俺の名前が書かれてんじゃねえか!」
1の腕を掴んで身を乗り出す磯辺へと店内の視線が一気に集中する
「まあ俺の話を聞いてくれ」小声で磯辺をなだめる、しかし磯辺が戸惑うのも無理はない
1が説明に入る
「お前がこないだ調査してくれた、あの津山って男・・・あいつと俺は今夜、首都高でやり合う、
実は今回が二度目になるんだがな、まあそんな事はどうでもいい。実は人質を取られている、
一応相手は俺がレースに勝ったら人質は解放すると言っている、しかしはっきり言って
ああいう世界の人間だ、約束を守るかどうかの保証はない」
磯辺は椅子の背もたれに右腕を引っ掛け、左腕で自分の下顎をさすりつつ
怪訝な表情で俺の顔を見つめている「・・・それで?」
「もし俺が勝ち、奴が人質を解放するってんならなんら問題は無い、ハッピーエンドだ。
しかし俺が勝っても相手がその、組織力にモノを言わせて
俺と人質をどうにかしてしまう可能性もある、それに加えて俺が勝てるとも限らない」
磯辺「確かにな・・・勝っても負けても結果は同じかもな、相手が相手だ、
約束を守ると考える方がどうかしてる」しばらくうつむいていた磯辺だがふと思いついたように顔を上げる
「人質っつったな、その人質ってのは誰なんだ?お前とどういう関係がある?」
「それは・・・」黙ってうつむいてしまう1、それを見て大きな溜息をつく磯辺。
「1よお・・・ここまで来てそりゃねーだろ、それくらいは話してもバチは当たらねえと思うぜ?」

383 :240:2006/06/22(木) 08:28:11 ID:RFFKFO+v
(上の続き)
なるべくなら黙っておこうと思っていたが、さすがにここまで来ると誤魔化せなくなる
1は極力簡潔に事の一部始終を話した。
「ふん・・・なるほどな・・・」
「そこでだ、もし・・・勝ったにしろ負けたにしろ、万が一俺の身にに何かがあった場合は
人質の救出をお前に頼みたい、仮に俺がくたばった場合保険金が、5000万は出るはずだ」
「おいおい冗談言うな、お前が死んで作った金で人質を救出?考えたくもないぜ
そいつは専門外だ、仕事人じゃあるまいし、中村主水にでも頼めよ」
「何も本気で言ってんじゃねぇさ、あくまで万が一の保険って意味だ、
こんな事頼める奴はお前しかいないんだ、磯辺、頼むよ」手を合わせ頭を下げる1
「・・・引き返す事はできねえのかよ、その人質って女はお前を利用しようとしてたんだろ、
何もお前がそこまでして助ける義理は無いんじゃねえか?別に殺されるわけでもないだろうし」
「確かに殺しやしないだろうさ、・・・磯辺、お前が潜入調査の時に盗撮してきたあのヘドの出そうな写真、
お前はその目で見て来たんだろ、あいつの下で取り引きされた女の行く末をよ、
ありゃ人間のやる事じゃねえ、奴ら女をヒトと思っちゃいねえんだ、豚か便所の扱いだ」
苦虫を噛み潰した様な表情の磯辺に1が追い討ちをかける
「それにな・・・ハッキリ言って、利用しようとしてたとかもうそんな事はどうでもいいんだ、
あの子が今頼れるのは俺しかいない、それに・・・」1は窓越しに自分の新しい相棒、ZX-10Rを見つめる
「やっぱり俺は・・・走り屋なんだよな・・・ここまで来たら奴に俺のケツを拝ませてやらないと気が済まないんだ」
1の視線に釣られて外のZX-10Rに視線を注いでいた磯辺だがやがて返事をした
「わかったよ、あまり気分のいいモンじゃ無いけどな・・・」
(駄文失礼しました。)

629 :240:2006/07/14(金) 05:05:09 ID:dqQ7dcGq
(派生編2>>383の続き)
「危険な事を頼んで済まない、ホント恩に着る」テーブルに両手をつき頭を下げる1。
「さっきはあんな事を言ったが、丸っきり専門外ってわけでもないしな」
「と、言うと?」1が聞くと磯辺は少し困った顔をしてみせる
「ン・・・まあ、いろんな知り合いが居るって事よ、例えば金に困った第一空挺のOBとか・・・」
語尾を濁しつつも自信ありげに微笑む
その顔を見て少し違う領域の空気を感じた1はそれ以上の質問を控えた「そ、そうか」
そう言えば以前、冷やかし半分にこいつの事務所を訪れた時だ、
あまりにも客っ気がないのでこんなので生活出来るのか?と聞いた事がある、
その時こいつは「探偵業だけじゃ食えねえよ・・・だから人材斡旋やら銀行屋の真似事もしてんだ」
と半ばやけくそ気味に言っていた。親友と言える俺でさえこの男の暗黒部分は計り知れない。

話を終え、喫茶店の代金を磯辺の分もまとめて払ったあと、バイクにまたがり帰途につく
自宅アパートに着いた頃すでに時刻は正午を回っていた。
大きな溜息をつきつつジャケットを脱ぎ、そのまま畳の上へと横になる、窓から入ってくる風が心地よい
(音楽が聞きたいな)、ふと思う、確かCDデッキの中にはエリック・セラのアルバムが入ったままになってる筈だ
しかし棚の上のリモコンを取るほどの気力は残っていない
(まあいいさ、たまには風の音だけってのもな・・・)
瞳を閉じ、耳をそばだてるとどこからか微かに風鈴の音色が聞こえてくる、
(・・・もうそんな季節か)そんな事をぼんやり考えながら1は眠りについた。
(駄文失礼しました。あと間隔開きすぎて申し訳ない・・・)


630 :240:2006/07/14(金) 05:36:26 ID:dqQ7dcGq
(上の続き)
夜になり一層賑やかになり始めた新宿歌舞伎町、今更言うまでも無いが人の欲と金が昼夜関係なく蠢く街
その中に津山の自社ビルは建っていた、7階建てに地下一階というこの辺では珍しくもない建築物、
その6階奥、非常階段左手に津山の自室はあった。

殺風景な部屋の中、回転式の椅子にもたれ、棚の上に並ぶ七つの物体を眺めつつ
津山は物思いに耽っていた。
棚に並んでいるのは6つのフルフェイスに1つのジェットヘル、
今までに津山が首都高で勝負し、敗者から奪った戦利品だ。中には派手な装飾のなされた物もある。

(コンコン)と控えめにドアをノックする音が響く、メットから目を逸らさず言い放つ「開いてるぜ」
クリップで留められた数枚の書類を腕に抱え入って来たのは長年津山の下に仕える会計士、玄(ヒョン)だ
切れ長の目に色白細面という端正な顔立ちは女性と見間違える者も少なくない。
「今月の支出の件で二三伝えておきたい事がありまして・・・」書類に目を落としつつ喋り出そうとしたが
津山の様子がいつもと少し異なる事に気が付く「どうか、しましたか?」
「ああ、すまん少し考え事をな・・・」とは言いつつ玄の話に耳を貸す様子は全くなさそうだ
極めて几帳面な商売人である津山にあってこの様な状態は珍しい、しかし玄には察しがついていた
「首都高速へ行くんですか?」単刀直入に聞く。
「・・・よくわかったな」
「三下共が騒いでましたよ、今夜はあの地下室に軟禁している女を賭けてるとかなんとか」
津山が鼻で笑う「フン、耳ざといな、まあ正直言うとあんなガキ一匹どうでもいいんだけどな」
「どういう事です?」

631 :240:2006/07/14(金) 05:38:03 ID:dqQ7dcGq
(上の続き)
「問題は相手の男なのさ・・・前回は気付かなかったがどうやら近畿圏の元走り屋らしい」
「すると二度目の勝負ってわけですか」
「そうだな」
「私には理解できませんよ」
「ハッキリ言うね・・・フフッ、しかしそうだろうな、これは俺の個人的な問題だからさ」
「個人的な、ですか・・・よければ話して貰えませんか?」
津山が少し変な顔をする、特異な生物でも見るような顔だ
「珍しいな、お前みたいな人間が特定の個人に興味を持つのは、
そんな事を聞いてどうする?無意味な事だろ」
「そうですね、ただ、あなたという人間に興味が湧いた、それだけじゃダメですかね?」
玄の顔をまじまじと見つめる津山、それに対し微かな愛想笑いを浮かべる玄
「フン、まあいいだろ、つまらん話だけどな」
おもむろに椅子から立ち上がり玄に背を向け窓へ顔を向ける
「俺が孤児だったって話は言ったよな、これは俺が孤児院を出て働きながら夜間高校へ通ってた時期の話だ」
そう前置きし津山は話し始めた・・・


632 :240:2006/07/14(金) 05:40:54 ID:dqQ7dcGq

「俺には兄貴がいた、と言っても孤児院で知り合った血の繋がっちゃいねえ兄弟だ、
俺は兄貴を慕ってたし、兄貴も俺を可愛がってくれていた、もう15年くらい前になるかな・・・、
三度の飯よりバイクが好きで休日ともなれば一日中バイクを乗り回したり弄ったり、そんな人だった
既にMFJの125クラスで勇名を轟かせていた兄貴だったが、さらなる目標があった、
HRCのワークスライダーになってWGPに出場する、それが兄貴の夢だったんだ
そして俺達を今まで見下していた奴等を見返してやるんだってね、口癖だった。
実際のところ兄貴は速かったし、周りの連中もそれを認めていた、
休みの度に通っていた首都高でも兄貴を越える様な奴はいなかった
そんな兄貴が俺には誇らしかったもんさ」そこまで話し軽く溜息をつく

「そんな時だったな兄貴が峠で死んだのは・・・」

「峠で、ですか?」玄が聞く
その問いに構わず津山は続ける
「あの日、兄貴と俺は箱根へ出掛けたのさ、ちょっとした日帰りツーリングのつもりでな
サーキットや首都高へはしょっちゅう通っていた兄貴だが箱根の峠へ行くのはまだ3〜4回目だった
濃い、嫌な霧が出てたな、ヘッドライトの光線がくっきりと見えるくらいの・・・
県道を過ぎ長尾峠の手前に差し掛かり信号待ちをしていた時だ、急に背後の霧の中から一台のバイクが現れた
俺もまだバイクに詳しくなかった頃だったからそいつの乗ってるバイクが何かは憶えていない
だがそいつのマシン、身のこなし、そして独特の気配、それらを感じて俺はピンと来た
『こいつは走り屋だ』、おそらく兄貴もそう感じてただろう
そいつは兄貴の乗るGPZ900Rの隣に自分の車体を並べるとアクセルを吹かし始めた、相手は兄貴を挑発していた
まだ数回しか来たことがなくコースをよく把握していない兄貴には不利だったろう、
しかし兄貴はその挑発に乗ってしまった、弟分である俺の手前、現役のレーサーとして退く訳には
いかなかったのかもしれない、信号が青になると同時に二人の乗るバイクは前に飛び出した、
俺も必死で追いすがったがモノの数秒で二人は視界から消えてしまった、そして・・・」
津山が口を閉ざした
玄が口を開く「大体予想がつきますね」

633 :240:2006/07/14(金) 05:45:50 ID:dqQ7dcGq

しばらくして津山も口を開いた
「そうだ、しばらく追っていくと兄貴は血まみれで路上に寝転がっていた、バイクの方は
ぐしゃぐしゃになってな、相手の姿は見えなかった、俺は目の前が真っ暗になったね・・・」
「・・・その後は?」
「さてな、よく憶えていない、兄貴は救急車で病院へ運ばれたが五時間後に死亡した
警察に事情聴取もされたが結局事故は自損という事で処理された、まあ当然だな、話はそれだけさ」
「それが・・・峠の走り屋を誘って首都高で勝負する理由、ですか?」
「さてな・・・その辺は自分でもよくわからない、大切な人を奪った奴等に復讐、
とかそんな事は今更思っちゃいないが・・・ただな、嫌いなんだよ、兄貴が死んだあの日あの瞬間から
『峠の走り屋』ってものがな」そう言い棚の傍へ歩み寄り、並べられたヘルメットの一つを軽く撫でた

(・・・今夜で8つ目か・・・)

(長すぎる連投及び、スレ汚し申し訳御座いません。)


685 :240:2006/07/25(火) 04:35:05 ID:gAT3mDvO
(派生編2>>633の続き)

(ジャー、ジャジャジャー・・・)台所の方からフライパンを使う音が聞こえる

頭上に置いている目覚まし時計を掴み取り、寝ぼけた眼で針を見る
(pm09:26)、窓の外は真っ暗だ。
「結構寝てたな・・・」そう呟き、ムクリと上半身を起こす
と、そこで我に帰る、台所に居るのは誰だ?
俺は一人暮らしだし彼女だって丸2年程ご無沙汰だ、黙って部屋に入る奴などいない

「・・・だ、誰だ?」少し緊張しつつ台所に言葉を投げかける
冷蔵庫の陰から美咲が顔を出した
「あ、起きちゃった?夕食が出来てから起こそうと思ってたんだけどな」そう言い明るい笑顔をみせる
「・・・おまえ、どうやってこの家に入った?」鍵はかけといたハズだ
「ヘヘッ、合鍵」イタズラっぽい笑みを浮かべ再び料理へ眼を移す
合鍵を渡したおぼえなど全くないのだが。立ち上がり台所へ向かう
「何してんだ?」妹の突然の訪問にうろたえつつ1が聞く
「料理作ってるんだけど、何か不都合でもある?」人を食った様な美咲の返し方にさらにうろたえる1
「・・・いや別に。ちょっと珍しいなと思って」
寝起きという事もあって考えるのが面倒になってきた1はそこで話を切った

美咲が入れてくれたよく冷えた烏龍茶を飲み、少し落ち着く
・・・美咲がこの部屋へ来ること自体はあまり珍しい事でもないが
勝手に上がり込んだり料理をするというのは初めてだ
珍ピラからリンチを受けた兄を少しはいたわってやろうとでも思っているのだろうか。

「シャワー浴びて来たら?ちょっと汗臭いよ」
「そうか」そう言いコップに残った烏龍茶を一気飲みし、タオル片手にユニットバスへ向かう
浴室に入り冷たいシャワーを浴びる、水流が肌へと当たり弾ける感触に少し身震いする
(空気読まずの投下スイマセン。それと駄文失礼しました。)


724 :240:2006/08/02(水) 18:54:09 ID:AfJXevBp
(派生編2>>685の続き)
シャワーから上がると美咲がちょうどテーブルに料理を並べ終わった所だった
餃子に野菜炒め、それを見て1の口の中に唾が溢れてくる、そう言えば昨日から何も口にしていない
「おお、うまそー」
美咲がスダレ状になっている1の前髪を見て愚痴る
「ちょっと、前髪伸ばしすぎじゃないの?」
「そうかあ?」髪型には無頓着だ
「そんなんだと新しい女の子出来ないよぉ?」
「いまだに男のいないお前に言われたかねえよ」言ってから1は後悔した
美咲の表情が思いのほか暗くなったからだ、少し言い過ぎたかも知れない
場の空気を取り戻すべく明るい声を出す
「そ、それじゃー、食べるか!」
「ん・・・」

食べ始めたはいいが美咲の表情は曇ったままだ
沈んだ空気に溜まりかねた1が口を開く
「このギョーザ、エビ入ってるんだな、これは旨いわ」
「!、そ、そう・・・かな?ヘヘッ、別に兄さんに褒められたって嬉しくないけどね」
何とか機嫌を直せた様だ、そこから会話が弾んでくる
「父さん怒ってたよ、勝手に病院抜け出したりしてさ」
「嫌いなんだよ、病院の空気ってぬるま湯みたいで、でも親父に迷惑かけてしまったな
本当は別の理由なんだが適当に答えておく。
美咲の作った餃子は旨かった。

725 :240:2006/08/02(水) 18:56:37 ID:AfJXevBp
晩飯を食べ終わり、美咲と他愛のない会話をしながらテレビを見る
「兄さん、どうなの最近、仕事とか」
「どうかな、あんまし順調とは言えんな、転職するかもしれん」
「またぁ?もうちょっと頑張ったら?」
「人間関係って奴が煩わしいんだよな」
この点俺と美咲は正反対と言える、美咲は誰とでも仲良くなれるタイプの人間なのだ。

突然美咲が関係ない話を持ち出す
「ねぇ、下にピカピカのバイク停まってたよ、アレ兄さんのでしょ?」
少しドキンとする
「あ、ああ、まあな」
「カワサキのニューモデルでしょ?あんな凄い単車買ってどうすんの?
前のVTRが潰れてからまだ数日しか経ってないのに」
「ちょっと乗り回してみたくなっただけさ」
「・・・また走り屋に戻ったり、な事は無いよね?」
「まさか・・・ハハッ」否定し笑ってみせるが、心中穏やかではない
(駄文失礼しました。)

817 :240:2006/08/13(日) 06:03:35 ID:v5tks+fF
(派生編2>>725の続き)
(pm11:31)
ふと時計を見るとそんな時間だった、そろそろ行く用意を始めなければならない
美咲を見るとうつ伏せになって古いバイク雑誌を読んでいる
「美咲、お前明日講義あるんだろ、帰らなくていいのか?」
「あしたは休講、それになんか帰るの面倒になってきた、今日は泊まろっかな、ダメ?」
「別にいいけど、オレ今夜用事あるぞ」
新しく買ったホワイトカラーのライディングジャケットを着込みながら返事する
「用事って、なんの?」
瞬間、答えに窮する1
「あ、あぁ、磯辺と飲みに行く約束してんだ」
「へぇ、でも磯辺さん今夜は仕事入ってるって言ってた様な気がするけど?」
髪をかき上げながらおもむろに起き上がる美咲
「え?・・・ああ、その、な・・・」
普段嘘などついた事のない1、美咲の言葉にマトモな返事が出来ない
「嘘でしょ」美咲がトドメを刺す。
美咲から注がれるまっすぐな視線に痛いものを感じる
「どこ行く気なの?」
「・・・・・・」気の利いたセリフが思いつかない
「首都高でしょ?」
「!」
「今日の昼間、磯辺さんに会って聞いてきたの、全部。
病院いた時、兄さんちょっと様子ヘンだったから、何かあるんじゃないかなって思ってさ」

818 :240:2006/08/13(日) 06:04:39 ID:v5tks+fF
予想外の状況に何も言うことが出来ない1に美咲が語り始めた。
「・・・磯部さんも最初は隠してたけど、でも、あの人って女の子には嘘つけない人だよね、
強く問い詰めたらあっさり本当の事教えてくれた、兄さんが今日一人の女の子を助けるために
首都高でレースをやるんだって」
「バレてたのか」
「これでも20年以上の付き合いだから、ちょっとでも様子が変だったらすぐに分かるよ」
「・・・ゴメン、黙ってて悪かったよ」
「相当タチの悪い相手なんでしょ、磯辺さん言ってた『あいつヤバイかも知れない』って
・・・行っちゃダメだよ」
「美咲、悪いけど・・・」1が言いかけた時、美咲がポケットからなにやら取り出した
二つ折りの紙片、そう、病院で1が記憶を取り戻すきっかけとなった奈津美のメモである
「この子、兄さんの事『お兄ちゃん』て呼んでるんだって?」
「あ、ああ・・・」
「何で兄さんの事お兄ちゃんて言ってんの、その子兄さんとどういう関係なの?」
少し怒った感じで美咲が詰め寄る、強く握られた手は、震えていた。
「ひょんな事で知り合って、ただオレの顔が死んだ兄にそっくりだったらしくてそう呼んでるだけさ」
「じゃあそのカワイイ妹を助けるために、そんな危険な事に身を晒すの?」
心なしか、美咲の声が震えている
「いや、さ・・・」

「別にいいよ、誰が兄さんの事お兄ちゃんって言おうと・・・」
まっすぐに1の顔を見つめていた美咲だが不意にうつむく
「で、でもさ、私だって・・・兄さんの、妹なんだけどな・・・」
搾り出す様な声と共に、うつむき加減の美咲の目から光る物が流れ落ちた、涙だ。

819 :240:2006/08/13(日) 06:05:21 ID:v5tks+fF

その時1はやっと理解した、美咲は1を引き留めようとして今日この部屋へやってきたのだ。
だが・・・

1は玄関を開け、言った。
「スマン美咲、だけどそろそろ時間だ、行ってくる」
「嫌よッ!子供の頃から何も兄さんらしい事もしてくれなかったクセに、
私の事少しも見てくれてなかったクセに!それでも・・・それでも私は兄さんが元気で
そ、傍に居てくれるだけで、それだけで良いのに、どうしていつも、勝手に遠い所に行こうとするの!?」
「・・・じゃあな」そう言い1はメットを掴み玄関を開くと表へ飛び出した
「バカッ!カス兄貴ッ!死んじゃえ!!」
背後からは美咲の泣きながら1を罵倒する声と皿や花瓶の割れる音が聞こえてきた
美咲の叫びはともすれば1のバイクへ向かう足を鈍らせようとするが、もう後戻りは出来ない
暖気もままならないマシンに跨り、アクセルを吹かしギアをローに入れる。そのまま雑念を振り切るかのように
急加速をしつつ、再び1は夜の首都高へ向かい走り始めた・・・
(駄文失礼しました。)

851 :240:2006/08/16(水) 06:24:39 ID:iTSAeJ3/
(派生編2>>819の続き)
津山の携帯ベルが鳴った、プライベート用の方だ
携帯を開き通話ボタンを押す「俺だ」
二三言葉を交わした後、携帯に耳を当てたままブラインドを上げ窓の外を覗く
表には軽トラと黒いセダンが一台ずつが停まり、
軽トラの荷台にはカバーを掛けられたバイクらしき物が積まれている
(・・・着いたか)
「待ってろ、今降りる」
このビルにはガレージが無い、そのため津山はバイクに乗る時、毎回ビルの下まで
軽トラに載せてバイクを持って来させるのである

バトルスーツに着替え、メットに手を伸ばす
スーツこそ同じだが今回身に着けるメットは前回と違う、
理由は相手が『本物』だからだ。
西日本屈指のテクニカルコースと呼ばれる六甲で、最速と噂された程の人間
津山は己の技量に見合う実力を持った峠の走り屋とレースをする時
必ずこのメットを身に着ける、バイクの車体カラーに合わせマットブラックに塗装されたその側面には
Judge spider(ジャッジスパイダー)という文字と、蜘蛛のイラストがペイントされている
その名には『首都高という己が巣網へ、峠の走り屋を誘い込み裁きを下す』
という津山の呪いが込められているのだ


852 :240:2006/08/16(水) 06:26:11 ID:iTSAeJ3/
ふとさっき玄との会話中、自分が言った言葉が脳裏をかすめた。
(大切な人を奪った奴等に復讐、とかそんな事は今更思っちゃいないが)
・・・そう俺は言ったが、本当にそうだったろうか?
所詮、俺は過去の復讐劇を演じてるに過ぎないのではないのだろうか?

・・・いや、考えるのはよそう、無駄な思考は走りに支障をきたすだけだ

津山が降りて来た時には《その》マシンは軽トラから降ろし終えられ、暖気運転を始めていた
二人の部下が見守る中、前回の12Rよりは幾分小柄なその車体に無言で跨り
しばらく四気筒が奏でるアイドリングの感触を確かめる
「あ、あの・・・」軽トラに乗っていた二人組の部下が話しかける
「ご苦労だった、お前らはもう帰っていい」
そう言い、今度は黒のセダンから降りて来た3人の男に向き直る
「手筈は昨日言ったとおりだ、お前らは一足先に地下室の女を連れて
保土ヶ谷PAへ向かえ、ヘマするなよ」
「わかってますよ、では」
「それと念のため言っておく、女には手を出すな、5000万の値が付く『商品』だからな」
「わ、わかりました」そう言うと部下達は地下室へ向かった

スタンドを上げ、クラッチを指に引っ掛けアクセルを軽く握る。

(さあ、裁きを下す時が来た)

(駄文失礼しました。)


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